highway near trees under cloudy sky

矛盾の内包がテーマだと思った。

人には様々な自分(分身)が内在している、というと平野啓一郎の小説を思い出すが、この映画を見てそんな感想を持った。

どれがホントの自分か、ではなくそのどれもが自分であり、矛盾を抱えて生きている。他人との関わりの中で見せる自分はそのほんの一面に過ぎない。自分がそうなのだから他人も勿論そうだという演繹的な判断ができる。

「その全てをその人だと思うことはできませんか?」というニュアンスの会話があったが、その全てを認める事でより深く関わり合う事ができるし、それを愛情と呼ぶのかもしれない。

三人称においてはどうでも良いことで、嫌なら付き合う必要は全くないが、二人称はそうはいかない。そこを合わせ飲む度量や人間の深さが必要だ。

コミュニケーションは最も重要な要素で、どこまで忠実に自分を出せるかにかかっていると思う。自分の表出が相手の表出のトリガーだ。

言葉によらないモノもあるがまずは言葉だ。手話はもちろん見た事はあるが、この映画で音(言葉)よりも伝わる事がある!と気づき、感動した。

広島から北海道に向かうドライブはまさに喪失から再生へのプロセスだった。「ノルウェイの森」を思い出す。

村上春樹らしさがあちこちに散りばめられていたし、キャストもみんな素晴らしく自然で心地よかった。

もう一度映画館に行きたいと思う。