grayscale photo of people sitting on bench

隙が無くて傑作だったと思う。

悲哀で染まった全編に暴力的な衝動が噛み合い引き込まれてしまった。

主役の綾野剛(山本)は勿論、俳優はみんな良かった。配役にも違和感がなくリアルだった。


偏見がテーマのひとつになっていて、その人をあるがままに見る事や自分の頭で考える事が出来ず、SNSや他人が言ったコトをなんでも信じてしまう”普通”の人間が描かれていた。

そしてそこには「義理」も「人情」も無かった。

一方、ヤクザの世界には少なくても「心」や「思い」はあった。


回想で「退屈でも普通に生きてみたかった。」という場面があるが、この場面の”普通”とは”命”をかけない生き方だと言える。

要するに“細く長く”だが、逆に、そっち側で生きていると、“太く短く”に憧れる。


サラリーマンを選んだ時点で、太く短くに憧れる資格は失ってはいるが、、

ただ長く生きて何をするのか?と考えると、せめて今この時だけを生きたいと心底思える。(その資格はあるはず) 

最期まで「ヤクザ」にしがみつくしかなかった山本の哀愁が良いし、翼を守るための自己犠牲は、男の最高の定義だ。


翼はその経験だけで、きっと、力強く生きていくと思った。