富士山

Sportsterのアクセルを吹かすとKerKerのマフラーが解き放たれたように響く。

ゾクゾクする。

KOOLとZIPPOがウエストバックにあるのを確かめてゆっくり走りだす。

これを忘れるとショートツーリングは台無しだ。

曇り空から光の筋が届き、青空が覗く。

スロットルを徐々に開けてキャブレターから混合気をEvolutionに送り込む。

インジェクションでは味わえない世界。

硬質かつ無機質だ。

最新マシンにはない侘びと寂び。

精進湖線は台風の影響からかアスファルトは痛み、工事で一車線のところがあったり、ところどころ濡れていたりする。

バランスをとりながら慎重に走る。

トンネルを2つ抜けると精進湖が見えてきて、前の直進するLEXUSに別れを告げ、右折車線にはいる。

更にスピードを落として湖畔を半時計周りに周ると左に富士山が現れる。

駐車場にバイクを止めてGEORGIAのBLACKを買って湖畔まで下りる。

KOOLにZIPPOで火を点ける。

ステイオンタブを開ける。

富士山が発するちょっと冷たい大気とKOOLのメンソールをおもいっきり吸い込む。

そしてコーヒーを飲む。

精神が解放され、エネルギーが満ちるのを感じる。

バイオリズムがリセットされる。

「やっぱり最高だ!!」

これがあるからなんとか生きていける、と思う。