
「明日死ぬかのように生きろ」と言われるがオレにできる筈もない。
日々の形式の中で生きている独りの男が病気で死期を知り、自分の人生と初めて向き合う。
生きる意義を問う作品であり、さまざまな視点から描かれた名作だと思った。
死に肯定された生と、若さがあり屈託のない明るい生は、180°違っているが、交わる事でどちらも輝きを増す。
人生には段階があるのだ。
少し前まで「退屈だなぁ」と感じたはずの映画もシミジミ心に染みる。
ビル•ナイの抑圧された演技や間、表情が静けさの中に漂う。
余韻が素晴らしい。
オレもジジイになったもんだ。
死が見える事で己の人生と向き合い、やるべき事が明確になる。人生の意義が顕われる。
それは何処か他の場所にあるのではなく「今、この場所」にしかない。そしてそれは自分のためだけにどれだけ生きてもそこには存在しない。虚無だ。
他人の為にやる事(仕事)が結局は自分の人生を意義あるものにする。
ただしそれは他人の評価をあてにしていたら辿り着けないただ一つの「オレだけの生」。
その場所に行き着くためには感性が必要だ。
そしてなにより時の洗礼を受けなければならない。
雪のブランコは季節が変わっても揺れ続けるに違いない。